ディッピングとスプレーに関するまとめ
金属表面処理におけるディッピングとスプレーによる処理方法について説明します。
ディッピングとスプレーとは
金属表面処理用の薬剤とワーク(処理物)を接触させて反応を起こす方法として、ディッピング処理とスプレー処理の2通りの方法が多く採用されます。
ディッピング処理は、金属製品を表面処理する場合に、金属製品全体、又は一部を薬液の中に沈めて処理を行うことです。対してスプレー処理は、ワークに対して薬剤をスプレー状に吹き付けて反応させます。この2通りの処理方法は、ワークのサイズや形状、生産量などを元に選択します。
ディッピングとスプレーの特徴と利点
ディッピング処理とスプレー処理を比べると次のような違いがあります。
まず、ディッピング処理の場合、ワーク(処理物)を処理液に沈めて処理を行うため、必要な処理液の量がスプレー処理より多くなります。しかし、薬液量が多いことによってワーク処理に伴う薬剤濃度の変動が小さく抑えられ、仕上がりが安定する利点があります。次に、スプレー処理の場合は処理液をスプレーで吹き付けるため、物理的な力が加わり特に脱脂工程での処理性が向上します。
両処理方法共に、ワークの形状や吊り方等などによって、薬液と接触せずに処理効果が得られない場合があります。ディッピング処理の場合は、エアーポケットの発生によるものです。例えば、お椀をひっくり返して水に沈めるとお椀の中に空気が溜まって水が入りません。このお椀の内の空気が溜まった部分をエアーポケットと呼びます。スプレー処理の場合は、スプレーの陰になって当たらない部分は薬液と接触しないため効果が得られません。
最後に、スプレー処理の場合は処理液をスプレーするためのノズルを使用しますがノズルの管理・メンテナンスをこまめに行う必要があります。これを怠ると処理液をスプレーすることが出来なくなり、ワークが全く処理できない状態に陥ります。ディッピング処理の場合は、内部に溜まったゴミやスラッジの除去や循環配管内部の清掃が必要ですが、スプレー処理と比較して管理・メンテナンスは容易です。
まとめ
ディッピング処理とスプレー処理は、それぞれに長所があります。ワークのサイズや形状、数、処理工程に合わせて選択する必要があると考えます。