化成皮膜について
化成処理とは
化成処理とは、金属などの素材の表面に、化学的な方法によって皮膜を形成する処理のことです。
素材表面に化学反応を起こして表面状態を変化させることによって、耐食性を高めたり、塗料との密着をよくしたりするなど、元々の素材に足りなかった性質を与えるために化成処理を施します。
化学薬品を利用した酸化還元反応や電気化学を応用した酸化や硫化による方法などがありますが、いずれも酸化物や硫化物、リン酸塩などで皮膜を形成して金属表面を覆う形になります。
塗装の下地処理や表面の着色、錆止めのために用いられることが多く、防食メッキと呼ばれるものも化成処理の一種です。
塗料の密着性を高めるために使われる以外では、耐食性を向上させたい自動車や建材、機械などの部品に施されることが多いのが特徴です。
ここでは、ケミコートの得意とするリン酸塩処理を中心とした化成処理について記述します。
化成処理の種類
化成処理は分類の仕方がいくつかあります。
ここでは、大きな分類として化成処理の対象となる主だった金属の種類による分類から、化成処理の例を挙げます。
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鉄鋼用化成処理
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リン酸塩皮膜
リン酸鉄皮膜やリン酸亜鉛などのリン酸塩による皮膜を化成するもので、下記のような種類があります。
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リン酸鉄皮膜
リン酸鉄皮膜は非晶質の皮膜で写真のようなブルーカラーや黄金色といった干渉色の化成色を呈します。
リン酸鉄皮膜を処理する前と後の表面を電子顕微鏡で拡大観察しても見た目の違いは分かりません。
リン酸鉄皮膜が適正に化成しているかどうかは前述の化成色で確認します。リン酸鉄皮膜は、屋内家具を始めとした高度な耐食性を必要としない環境で使用される鉄鋼製品に適用されます。
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リン酸亜鉛皮膜
リン酸亜鉛皮膜は結晶質の皮膜で下の写真の様な艶消しの灰色をした外観になります。
リン酸亜鉛皮膜を電子顕微鏡で拡大観察すると、下の写真のような結晶が見られます。
リン酸亜鉛皮膜が適正に化成していれば、鉄鋼の金属光沢が消えて灰色の化成色が確認できます。リン酸亜鉛皮膜は、屋外製品を始めとした高い耐食性が求められる鉄鋼製品に対して適用されます。
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リン酸マンガン皮膜
リン酸マンガン皮膜は結晶質の皮膜で、リン酸亜鉛と似た灰色から黒色の外観になります。
厚めの皮膜が形成されるため、防錆皮膜やその特性から潤滑皮膜として利用されます。
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ジルコニウム皮膜
近年、リン酸亜鉛皮膜と同等の性能を有する化成皮膜としてジルコニウム皮膜があります。
化成処理後の外観は、写真の様な黄金色やブルーカラーなどの化成色となります。
他の化成皮膜と同様に、化成皮膜の有無は外観によって簡易的に確認できます。リン酸亜鉛皮膜処理と比べて、表面調整工程が不要であることや発生スラッジ量が少ないことで廃棄物が少なくすむことなどからリン酸亜鉛皮膜の代替として採用されるケースがあります。
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黒染め
鉄鋼表面に「黒サビ」と呼ばれる酸化皮膜を化成します。
名前の通り、黒い外観をしていて、その外観を目的に採用されることがあります。
また、黒染め処理前後で被処理物の寸法変化が極めて小さいため、寸法公差の厳しい鉄鋼製品で採用されることがあります。
アルミニウム用化成処理
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クロメート皮膜
耐食性が非常に良好なことが特徴となるのがクロメート皮膜です。
アルミニウムだけでなく、他の金属に対しても採用されることのある皮膜です。
無色や黄色、茶色、黒色など鋼材や薬剤、処理条件などにより仕上がり外観が異なります。
長く、6価クロメートを配合した処理液が使用されてきましたが、人体や環境への影響から3価のクロメートを配合した処理液やノンクロメート皮膜への移行が進められています。
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ノンクロメート皮膜
ジルコニウム系やチタニウム系などの種類がある。
処理後の外観は皮膜の種類により異なるが、上記2種については一般的に無色の仕上がりとなる。
人体や環境へ影響のあるクロメート皮膜剤は欧州を中心に法規制が厳しく、ノンクロメート皮膜への切替が進められてきている背景がある。
化成処理の目的や特徴・注意点
化成処理は、金属の表面処理として、防錆効果を初め、塗装の密着性の向上や、美しく見せる目的などにも用いられています。
化成処理を施すことが可能な素材の種類も多く、処理方法も幅が広いため、目的に合わせた化成処理の種類と方法を選ぶことが大事です。
その他にも、素材の種類だけでなく、処理を施すもののサイズや、どこで何のために使う物なのかという点も適した処理方法を選定する際の大事な条件となります。
ですから、それぞれの処理方法について、得意とする分野、不得意とする分野などを理解し、どのような性質を加えたいのかもよく考えた上で、最も適した処理方法を選ぶようにしなくてはなりません。
また、処理の仕方によって、かかるコストなどにも差がありますし、耐食性や密着性の高さにも差があります。
ですから、どの性質を最も重視するのか、コストはどの程度までかけられるのかなどもトータルに考慮する必要があります。
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