リン酸鉄処理
リン酸鉄処理とはリン酸塩処理の一つで、ほかのリン酸塩処理とは異なり非晶質の皮膜が形成されます。
目視での外観は、黄色や青色、紫色といった干渉色となります。
リン酸鉄処理の特徴
鉄製品の塗膜密着性や耐久性を向上させる
主にスチール家具や家電といった屋内で使用される鉄製品を塗装する際の密着性、耐食性、防錆性を改善するために施されます。屋内使用製品の場合、屋外使用製品と比べて要求される耐食性能が高くないため、製造コストと性能とのバランスに優れたリン酸鉄処理が採用されます。他のリン酸塩皮膜ほどの耐食性能を持っていませんが、皮膜処理をしない場合と比較すると耐久性も良く、密着性も向上するので塗装下地用として広く採用されています。
工程数が少ない
リン酸鉄処理は、他のリン酸塩処理よりも少ない工程数で処理が可能です。通常、鋼材表面の汚れを除去する脱脂と皮膜化成は別の工程ですが、油やゴミによる鋼材の汚れ具合が軽微な場合は脱脂と皮膜処理を同時に行う脱脂化成として、さらに工程数を少なくする事が可能な場合があります。
コストを抑えられる
また、他のリン酸塩処理と比較して薬剤の管理が容易なため、日常管理の手間が少なくすみます。このように他のリン酸塩処理と比べて日常的なコストを抑える事が出来る特徴があります。コストダウンを目的にリン酸亜鉛処理からリン酸鉄処理に切り替える場合もありますが、製品に定められた仕様や素材を考慮した上で切替可能かどうか考慮する必要があります。
リン酸鉄皮膜剤加工液の主成分
リン酸鉄処理液の主成分は、リン酸です。リン酸鉄皮膜処理で得られる皮膜成分は、その名の通りリン酸鉄です。皮膜の成分となる鉄は鋼材由来です。リン酸鉄処理液が鋼材に対してエッチング反応を起こすことで、鉄が溶け出して、一部がリン酸鉄となって皮膜になります。溶け出した鉄の残りは、皮膜とならずにスラッジとして処理液に蓄積します。このようにリン酸鉄皮膜は、鋼材の鉄を利用して皮膜を形成するため、主な適用素材はりん酸と反応する鉄鋼製品です。