リン酸亜鉛処理
リン酸亜鉛処理とは、リン酸塩処理の一つで鋼材表面をリン酸と亜鉛を主成分とした処理液と化学反応させることで金属表面に強固に密着した不溶性のリン酸亜鉛結晶による皮膜を形成させる処理方法です。鋼材と塗膜との密着性・耐食性向上を目的とした塗装下地や塑性加工時などの潤滑皮膜などとして利用される化成処理です。
リン酸亜鉛皮膜は、リン酸亜鉛による結晶質の皮膜です。電子顕微鏡などで表面を拡大して観察すると、µmオーダーの小さな結晶で覆われていることが確認できます。小さな結晶によって覆われているため、リン酸亜鉛処理をした製品の見た目は、艶消しの灰色から黒色で、触ると若干程度ザラザラした感触になります。また、塗装をしたときに結晶の隙間に入り込むようにして塗膜が形成することで、投錨効果・アンカー効果によって塗膜の密着性が向上します。
リン酸亜鉛皮膜外観
左側:処理前の鉄素地
右側:リン酸亜鉛皮膜処理後
塗装下地として利用される時の皮膜重量は0.2~3.5g/m2となることが多いです。塗膜を剥がれにくくする密着性の向上と塗膜に傷が付いても錆が広がらないようにする防錆性や耐食性を大きく向上する効果があります。高い耐食性を求められる自動車を始め多くの工業製品に採用されています。
リン酸亜鉛処理の一般的な処理工程は、脱脂・水洗・表面調整・皮膜化成(リン酸亜鉛)・水洗です。水洗は、通常2段以上設けられます。リン酸亜鉛処理の前に表面調整をすることで、皮膜の化成性向上や皮膜結晶が均一で緻密になって耐食性の向上が期待出来ます。
塗装下地などで優れた性能を発揮するリン酸亜鉛皮膜ですが、リン酸鉄皮膜を比べると処理時に発生するスラッジが多く、処理槽内に過剰に蓄積すると仕上がりに影響する場合があります。スラッジの過剰な蓄積を防ぐために、定期的に清掃をするなどの対応が必要です。リン酸鉄皮膜と比較して、薬剤濃度の変化による化成皮膜への影響は大きいため、一定の品質のリン酸亜鉛皮膜を得るには適切な濃度管理をすることも大切です。
リン酸亜鉛皮膜の持つ高い耐食性に匹敵する性能を持ち、表面調整工程の不要な№ZRシリーズが登場しています。